文献ゼミ:メタン生成水田土壌での酢酸とプロピオン酸のターンオーバーに関与する可能性のある細菌及び古細菌群集構造における温度変化の影響

今日は6月6日に発表した文献を紹介します。

【タイトル】
Effect of temperature change on the composition of the bacterial and archaeal community potentially involved in the turnover of acetate and propionate in methanogenic rice field soil

論文掲載先
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1574-6941.2010.00883.x/full

【概要】
イタリアの水田土壌における温度変化に従った細菌、古細菌群集構造の違いとメタン生成プロセスの違いについて調べました。培養温度の異なる培養液からDNAを抽出しT-RFLP、クローニング、CCAにより微生物群集構造の違いについて調査しました。結果として温度変化による微生物群集構造の変化が確認され、メタン生成プロセスが異なる可能性が示唆されました。

【背景と目的】
 温度は重要な環境抑制因子の一つであり、水田を含む様々な環境において微生物の群集構造に影響します。しかし水田における温度変化の微生物群集への影響に関する研究は、メタン菌を中心に行われているが、細菌の群集に関する研究は殆ど行われていません。また、高温で培養された水田土壌において酢酸利用性メタン菌がほぼ存在していないにも関わらず蓄積した酢酸が消費されたという報告もあり、細菌群集が酢酸消費に関与していることが示唆されています。
 これらのことから筆者らは、水田土壌でのメタン生成では高温と低温で微生物群集とメタン生成プロセスが異なるのではないかと考えました。そこで筆者らは、イタリアの水田土壌を異なる温度で培養し、各温度からDNAを抽出してT-RFLP、クローニング、CCAにより解析し、温度変化における微生物群集構造とメタン生成プロセスの違いを調査しました。

【要約】
 35℃と45℃で培養されたイタリアの水田土壌における微生物群集構成はメタン生成経路と共にT-RFLP(末端標識制限酵素断片多型分析)と安定同位体分別を用いて研究されました。細菌と古細菌の両構成は45℃と比べ35℃で異なり、酢酸分解性、水素資化性メタン生成古細菌がそれぞれ優占していました。45℃の土壌の異なる温度(25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃)での培養への変更は、微生物群集の構成と安定同位体分別の両方に大きな変化をもたらしました。すべての処理において酢酸が最初に蓄積し、その後減少しました。プロピオン酸もまた一時的に生成され、消費されました。注目すべきは、高温条件下において古細菌群集構成と安定同位体分により酢酸分解性メタン生成古細菌が活動していないことが示されたにもかかわらず酢酸が消費されたことである。代わりに酢酸は栄養共生酢酸酸化により消費されたに違いない。高温条件下での酢酸の一時的な蓄積とそれに続く消費は、末端制限断片特性により、クロストリジウムのクラスターⅠと関連し、高温での酢酸とプロピオン酸のターンオーバーはクロストリジウムのクラスターⅠ、Ⅲ、Acidaminococcaceae、Heliobacteraceaeと関連していました。