文献ゼミ:高キシラナーゼ活性を持つ新リグノセルロース分解複合微生物系の多様性と機能特性

今回は6月13日に発表した文献について紹介します。

【タイトル】
Functional Characteristics and Diversity of a Novel Lignocelluloses Degrading
Composite Microbial System with High Xylanase Activity

【論文掲載先】
http://www.jmb.or.kr/journal/viewJournal.html?year=2010&vol=20&num=2&page=254

【概要】
 中国・北京の農地土壌からリグノセルロースを分解する微生物群集(XDC-2)を選別し、その種や分泌される酵素の特性についての研究を行いました。実験には稲わら、とうもろこしの茎を使用し、その分解系からキシラナーゼを抽出しました。抽出したキシラナーゼを異なる温度、pHで酵素反応を行い、各活性を測定しました。そのデータから至適条件や安定性を調査しました。XDC-2をPCR-DGGE法と16SrRNA遺伝子クローンライブラリーで解析し、GenBankのデータベースから得た近縁種の情報と比較して系統樹を作成しました。分泌されたキシラナーゼはpH6.0、40℃で最も高い活性を示し、pH3.0-10.0、25-40℃の広い範囲で高い活性を維持しました。また中温性の微生物が多く、Proteobacteria,Bacteroidetes,Clostridialesの3つの門に分類されるという結果が得られました。

【背景と目的】
 リグノセルロースは植物の細胞壁に多く見られる物質です。分解が困難であり、その利用は限定されていました。しかし近年、農業廃棄物である稲わらやとうもろこしの茎などがバイオマス資源として注目を集め始め、バイオ燃料や家畜の飼料などへの活用が見込まれています。その過程で最も重要な役割をもつのが微生物です。そのためバイオマスに関わる微生物の研究が盛んに行われています。
 今回の研究で筆者らは、特異な条件下でなくとも利用できる新たなリグノセルロース分解複合微生物系を提案し、その微生物群集の構築と分解に関与するキシラナーゼの特性を調査するために実験を行いました。

【要約】
 効率的な天然リグノセルロース分解複合酵素を得るため、長期管理、順化され堆肥や動物の排泄物で改良された土壌からXDC-2を選別した。XDC-2はリグノセルロースを分解するだけでなく、細胞外キシラナーゼを室温下で静置的液体培養で効率的に分泌しました。XDC-2は培養15日目で稲わらの60.3%を分解した。ヘミセルロースは効果的に分解され、細胞外キシラナーゼ活性は培養6日目で8.357U/mlで優性でした。細胞外粗酵素は天然リグノセルロースを著しく加水分解しました。キシラナーゼ活性の至適温度とpHは40℃とpH6.0でした。しかしながらキシラナーゼはpH3.0-10.0という広い範囲で活性化し、25〜35℃のpH5.0-8.0における静置液体培養下、3日後で80%の活性を示しました。継代培養のPCR-DGGE解析によりXDC-2は限定され、指示された培養の長期間にわたって安定であることが示されました。16SrRNA遺伝子クローンライブラリーの解析でXDC-2はClostridium、Bacteroides、Alcaligenes、Pseudomonasと関連のある中温性の細菌で構築されていることがわかりました。筆者らの結果は相乗的複合酵素の高性能複合微生物系を構築することによって効率的なリグノセルロース分解酵素を探索する新しい研究方法を提供しました。