水田土壌から分離した新規メタン生成古細菌

 当研究室において、弘前大学農学生命科学部附属生物共生教育センター金木農場(太宰治記念館 「斜陽館」 そば)の水田土壌から分離し、新種Methanobacterium kanagiense として提案したメタン生成菌の論文がInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiologyの6月号に掲載されました。M. kanagienseはメタン生成基質として水素ー炭酸ガスのみを利用するという特徴を示します。水田土壌から分離されかつ新規分類群として記載されたメタン生成菌はこれまでに6種あり、今回、私たちが分離した菌で7種になりました。

IJSEM
http://ijs.sgmjournals.org/content/61/6/1246.long
PubMed
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20639228?dopt=Abstract

Methanobacterium kanagiense 電子顕微鏡像です(ネガティブ染色による)。

外側に見える細胞壁の内側に、細胞膜と思われる構造が見られます。細胞膜はところどころ陥入しているように見えますが、この構造がどのような働きをしているのかはまだ分かっていません。ただ近縁な種のMethanobacterium formicicum でも同じ構造が観察されていますから、何らかの意味があるのでしょうね。
 このような光学顕微鏡では観察できない構造も、電子顕微鏡では見えてきます。見えなかったものを見て、分からなかったことを明らかにしていく。そこには学術的な価値が生まれるだけではなく、シンプルな「発見の喜び」があります。