この物体は?

梨の葉にできたこの物体は何でしょう?
葉の表

葉の裏

答えは、サビ菌の一種の梨赤星病菌(Gymnosporangium asiaticum)によって梨の葉にできた精子器(上)と銹子毛(下)です。精子器(黒い斑点)の中には+とーの精子が入っています。精子器の表面には蜜が分泌され、それを舐める昆虫を介して+と−の精子が受精すると葉の裏に銹子毛ができ、その中にさび胞子がつくられます。精子器は6月ごろ、銹子毛は6〜7月ごろにみられるそうですが、この写真は同じ葉の裏表で2011年7月16日に撮影したものです。さび胞子は銹子毛からとびだして風に運ばれてビャクシン属(Juniperus)の新芽に付着・発芽してビャクシンの中に侵入し、翌春の3〜4月に冬胞子堆を形成します。春に形成されるのに春胞子堆じゃなくて冬胞子堆なのですね。冬胞子の核相は重相(n+n)ですが、発芽直前に融合して複相(2n)になり、発芽後、減数分裂して担子胞子(n)をつくります。担子胞子の形成は4〜5月ごろで、風雨に運ばれて梨の葉にとりつきます。梨赤星病菌は形態を変えながら梨で夏を過ごし、ビャクシンで越冬する、いわば渡り鳥みたいな菌ですね*1。この梨のそばにはビャクシン属のカイヅカイブキ(Juniperus chinensis)が植えられているのでこの木が中間宿主になっているのでしょう。