微生物分析のために白神自然観察園で試料採取をしてきました
平成23年7月26日(火)
白神自然観察園の樹木葉圏に生息する微生物と、土壌に生息する微生物の研究のために、ブナ、イタヤカエデ、ハウチワカエデの葉、土壌(有機質を多く含むA層)の試料採取を行いました。試料採取には数時間かかったのですが、それよりも研究室に戻ってからの試料の整理やら分析の準備やらの方が大変でした。
尾根の土壌断面です。有機質に富む褐色森林土で、上層は黒色をしていますが、下層は明るい褐色をしています。どんな微生物が棲んでいるのでしょうね。平板培養法では特定の微生物が増殖してくる傾向があるので、分子生物学手法もとりいれた分析を行います。ちなみに、自然観察園は青森県の自然公園内にあるため、少しであっても勝手に土をもっていくことはできません。もちろん、今回の試料採取は許可を得て行っています。
折角の観察園なので、ついでに動植物の観察もやってきました。このところ涼しい日が続いているとはいえ、やはり夏です。動植物も活気づいているように見えましたね。
以下に観察した動植物の写真を掲載します。
ヒゲナガオトシブミ(Paratrachelophorus longicornis)。 葉っぱを巻いて卵を守る『揺り篭』を作ることで有名。
チャバネセセリ(Pelopidas mathias)。人懐っこく、ズボンや服にくっついてきました。花と間違えていたのでしょうか?
ウマオイのメス。ウマオイにはハヤシノウマオイ(Hexacentrus japonicus)とハタケノウマオイ(H. unicolor)がいて、鳴き声が異なるそうですが、これはメスなので判断できないですね・・
森の掃除屋ザトウムシの一種。クモに似ていますがクモ目には含まれず、クモ綱ザトウムシ目の生物です。
ヨツバヒヨドリ(Eupatorium chinense var. sachalinense)。ヨツバヒヨドリ・フジバカマ・ヒヨドリバナは互いによく似ていますが、葉の付き方で区別ができるようです。
トリアシショウマ(Astilbe thunbergii var. congesta)。裏返して葉の付け根を見ると鳥の足のように見えることから、この名前がついたそうです。
オカトラノオ(Lysimachia clethroides)。なるほど確かに動物の尾のような形ですね。
トチバニンジン(Panax japonicus)とその果実(下)。薬用植物で葉の形がトチの葉に似ていることからこの名前がつきました。
こう見えて実は、ゼンマイ(Osmunda japonica)の成長した姿です。摘み取られずに成長するとこのようになるのですね。
今回、特に面白いものを見つけました。
これは何でしょう?一見するとちょっと変わったただのキノコのように見えます。
なんと下から虫(カメムシ)が出てきました。そうです、これは昆虫に寄生するキノコ『冬虫夏草』だったのです。
中国ではコウモリガに寄生したものを漢方薬として利用しますが、こちらはカメムシに寄生しているカメムシタケ(Cordyceps nutans)という別種なので、残念ながら漢方薬には使えません。虫体は地中に埋まっている事が多いので、よく注意して見ないと見逃してしまいます。
今回も面白い発見がありました。夏真っ盛りに向けて、虫やキノコ好きにとっては期待が高まります。まあ、虫やキノコを観察するのが目的で行っているのではないのですがね。