津軽津軽の食と産業まつりに出展しています。

 白神酵母研究会と弘前大学白神酵母を使用している企業(カネショウ・ラグノオささき)が武道館で開催されている「津軽津軽の食と産業まつり」に出展しています。開催期間は本日24日から26日(日曜日)までの間で、リンゴ酢やパンの販売もしています。是非お越しください。

青森県郷土館 特別展『発酵食品パワー 〜ミクロのシェフとあおもり食文化〜』

 青森県郷土館にて『発酵食品パワー 〜ミクロのシェフとあおもり食文化〜』という特別展が開催されています。当研究室も写真の提供などで少しだけですが協力しました。今月初めに観覧してきましたが、素晴らしい展示内容でした。地方都市でこれだけの展示を準備するのは大変だったでしょう。 特別展は10月19日まで開催されていますので興味の有る方は是非御覧ください。

特別展『発酵食品パワー 〜ミクロのシェフとあおもり食文化〜』

郷土館特別展「発酵食品パワー」は解説書もすばらしい!


写真は当研究室で分離した白神酵母で製造したリンゴ酢とシードルです(特別に許可を得て写しました)。


ミズナラから分離したPanibacillus

白神自然観察園のミズナラ樹皮から分離したPaenibacillusの新種提案の論文が公開されました。Paenibacillusは土壌からよく分離される細菌で植物の生育促進作用を持つ種も存在します。今回は樹皮から分離したのですが、生態にも興味をもっています。

白神山地から分離したのでPaenibacillus shirakamiensis と名づけました。白神山地の名前が種形容語に使われた初めての細菌です。写真はネガティブ染色した細胞の透過型電子顕微鏡写真です。細胞の周りの糸状のものが周鞭毛でこれを使って運動します。

http://ijs.sgmjournals.org/content/64/Pt_5/1763.abstract

研究を通じた地域貢献

 当研究室では主として自然環境に生息する微生物を対象に研究を行っています。基礎的な研究がメインですが、研究成果が何らかの形で役に立つということは望外の喜びでありまして、研究の励みにもなります。

 2013年から、当研究室で白神山地から分離した酵母(弘大白神酵母)が弘前カネショウ株式会社さんにおいてリンゴ酢製造に使われています(http://d.hatena.ne.jp/microbiolog/20130604)。


 本年5月からは弘前のリンゴ公園に新設された弘前シードル工房Kimori (株式会社百姓堂本舗)で当研究室の弘大白神酵母がシードル醸造に使われることになりました。Kimori オープンは5月3日の憲法記念日だそうです。

ムキタケに関する論文

http://d.hatena.ne.jp/microbiolog/20130610/1370857900
にて紹介したS君によるムキタケの研究が論文という形で実りました。某誌にて発表されますがまだまだ先のこと(この雑誌は年2回の発行)なので詳細は出版されてからここでお話します。

S君は希望する研究職での就職も決まってこのところいいことずくめです。今後の研究も順調に進めばいいですね。

Anaerobacterium chartisolvens gen. nov., sp. nov.,について

 青森県五所川原市金木の水田土壌を接種源、定量濾紙を基質とした嫌気性セルロース分解細菌計数用MPN培養液から分離したのが絶対嫌気性セルロース分解細菌T-1-35株です。2003年に分離したままになっていたのを2011年からHさんが詳細に解析してくれました。この株はグラム陽性で大きな枠組みの中ではClostridiumのグループに位置付けられるのですが、普通のClostridiumとは異なり胞子をつくりません。そのくせ、90°Cで10分間加熱しても死なないという変わった性質がありますし、培養液のまま30℃に数年置いても増殖活性を維持しています。

T-1-35株細胞断面の透過型電子顕微鏡写真像

 16S rRNA遺伝子を用いた系統解析によってClostridium rRNA cluster IIIに位置づけられることがわかりました。以前は絶対嫌気性で、内生胞子をつくり、グラム染色陽性であり、異化的硫酸還元を示さない細菌をすべてClostridium に分類していたのですが、分子系統解析によっていわゆるClostridium とは系統的に多様な細菌の集合であることがわかりました。現在ではClostridium rRNA cluster I のグループに含まれる種が狭義のClostridiumとされています。私達が分離したT-1-35株はClostridium rRNA cluster IIIのグループなので新しく属名を考えなければいけません。


 分子系統解析ではT-1-35株と最も近縁なのがBacteroides cellulosolvensWM2株でした。なぜ、Clostridium rRNA cluster IIIの中にBacteroides属の細菌がいるのでしょうか。結論から言うと誤分類によるものです。Bacteroides cellulosolvensが記載された当時(1984年)は、形態的特徴、生理生化学特徴、化学分類学的特徴(脂肪酸組成など)に基づく分類が主流でした。基準株であるWM2株が絶対嫌気性、グラム染色陽性、非胞子形成であったためにBacteroides属に分類されたわけです。


 T-1-35株とBacteroides cellulosolvensWM2株は近縁ですが、別属に分けるのに十分な形質と系統の差異がありました。従って、新属新種Anaerobacterium chartisolvens (紙を溶かす嫌気細菌の意味)を創設し、T-1-35株を基準種としました。一方、Bacteroides cellulosolvensは誤分類であることが明確なので新属Pseudobacteroides を創設し、新組合せPseudobacteroides cellulosolvensを提案しました。